
被災者や被災地の復興を応援する。そのために千羽鶴を送る人がいる。しかし、被災者のなかで「実用性のないものはいらない」と言う人が出てきた。善意から送られてくる千羽鶴をいらないとする被災者に対し、批判が殺到した。
被災地に千羽鶴がいらないわけ
熊本地震ではたくさんの人が被災し、2度の大きな地震に加え、何百回もの揺れをいまだに受け続けている。そこで、被災地に支援をしに行けない人たちは応援の気持ちを込めて物資を送る。そのひとつが千羽鶴である。
しかし、被災者はその習慣はありがた迷惑だと感じているという。「水や食べ物が不足しているのに、なぜ千羽鶴?」と怒りの声もある。被災してみないとわからないかもしれないが、生きるか死ぬかの世界にいる被災者にとっては善意などどうでもよく、あるのは「少しでも快適な生活を」という思いだけだ。
「被災者は傲慢」
善意を踏みにじることを言う被災者には、傲慢とする意見が多い。千羽鶴は本来、長寿を願う贈り物とされ、病気が治るようにと願うものである。入院している人へのお見舞いに持っていくことが多い。それがいつしか拡大解釈され、辛い思いをしている人たちへの応援を願い送る習慣ができた。主に大きな災害で苦しんでいる地域へ送られ、「復興を頑張ってほしい」というメッセージの代わりとなっている。
千羽鶴はそう簡単に作れるものではない。千羽折るのは尋常ではない手間と時間がかかり、よほどの想いがなければ作れるものではない。被災地のことを考えて作ったものを「いらない」とされれば、傲慢と思うのは当然だ。
被災地は実用性のあるものを必要としている
その一方で逆の意見も数多くある。阪神淡路大震災や東日本大震災の被災者らは自分たちが味わった経験をもとに、「実用性のないものはいらない」と真っ向から批判に立ち向かっている。
阪神淡路大震災では、古着などの使えない物資を処分するのに2800万円もかかったようだ。これは明らかに必要のない出費である。東日本大震災の時も同様であり、被災者にとっては善意の押し付け以外の何物でもないようだ。特に、古着や生鮮食品は本当にいらないものとして、震災の起きるごとに呼びかけられているが、なくなることはないらしい。
生鮮食品は送り届けられる前に腐ってしまうし、古着はなにしろ数が多すぎる。避難所に届けられた古着を被災者に配っても、またすぐに大量の古着がやってくる。それに、阪神淡路大震災では火事がおき、東日本大震災では津波で家が流された人が多いのでわかるが、熊本地震ではどちらの損害もほぼない。そのため古着には困っていないのだ。
被災地へ物資として送られてきた古着は「汚れた衣類」だった… http://t.co/0ftfWVZGtD #被災地 #古着 #ありがた迷惑 #ワキガ pic.twitter.com/EKWzuUTL6x
— ふぁぼる (@rt_favoru) 2015年9月19日
震災時に送られてくる膨大な量の古着。洋服がないときには便利かもしれないが、多すぎてゴミ同然の扱いに。逆にこれだけあると避難所の場所も圧迫されてしまう。
結局、被災者に与える古着があるのであったら、貧しい国に寄付した方が良いと被災経験者は考える。被災者に沿った考え方が必要だ。
被災者への批判の反論
Twitter上でも多くの意見が述べられている。
被災地の人の「千羽鶴いらなかった」という発言に対して「人の善意をなんだと思ってるんだ!」と怒ってる人がいるらしくて、まあ被災地の人がそういう事を言うのはどうかと思うんだけど、でも実際のところ千羽鶴なんてどう考えてもゴミなんだから折り紙買う金で寄付してやれよって思うよね。
— のりお (@norio_hangover) April 27, 2016
折り紙よりも寄付金のほうが必要だとする声も多い。善意で送っているからといって、送られている方はどう思っているかわからない。完全な自己満足になっている可能性もある。
東北大震災のときに被災地に送りつけられた千羽鶴。
千羽鶴を受け取るべき派の人は、これを見てもう一回言ってほしい pic.twitter.com/j29m3ykaXJ— Herokey Ave (@ABC1970) April 28, 2016
送り届けられた千羽鶴。古着と同じようにたまっている。このようになっては感謝の言葉ではなく、邪魔となってしまうのも仕方がない。東日本大震災の経験を生かしてほしい。
震災で「ボランティアに行こう!」とか「千羽鶴送ろう!」とか100%善意に基づいた行動が「まだボランティアが動ける状況じゃない」「千羽鶴はいらない」とかで否定されてるのって、善意があればなんでもしていいわけじゃないし、かえって邪魔な場合も多いっていう好例だと思う
— tkq (@tkq12) April 18, 2016
千羽鶴は時期尚早であるという意見もある。今はまだ大変な時期で、水や食料の不足が問題となっているので、落ち着いてから送ればいいのではないか。邪魔をするのか一番迷惑である。
被災地で必要とされている物資
実用性のあるものとはいったい何なのか。被災地にあると嬉しいものは以下のものである。
・飲料水
・アルファー米(断水のため炊飯ができません)
・カップめんなど保存ができる食料品
・ウェットティッシュ
・おしりふき
・生理用品
・紙おむつ(大人用、子ども用)
・トレットペーパー
・粉ミルク
仮設トイレで女性用とか初めて見たから、思わずパシャった。これいいね。ありがたい。 pic.twitter.com/aJpbHp0EFX
— 瑞永 宵嘉@貯金と減量がんばる (@Silyouka) 2018年2月8日
仮設でも水洗式だといいが、そのためには水も大量に必要になる。
やはり、生理用品が不足することが多い。あまりテレビでは放送しないが、一番被災しているときにつらいのは排便だ。断水のためトイレが流れなくなってしまうからだ。今では電気が止まっても流れるようにできるトイレがあると言うが、そこまで普及していない。被災地にはすぐに仮設トイレを設置しようと動くが、どの地域にも十分になるほど設置できない。トイレの充実を図ることをまずしてほしい。仮設トイレを届けることの方が被災者にとってはうれしいはずだ。
今の仮設トイレは水洗式になっており、臭いが抑えられるようになっている。しかし、これがないとなれば、従来のボットン便所になる。これは便がたまっていくため、ものすごくにおうことになる。匂いを消すためには消臭剤が必要である。
このように被災した時に何に困るかを考えれば、送るべきものがなにか見えてくるはずである。汚い映像を流したがらないテレビを見ているだけでは、本当に被災者が困っているものはわからない。