
アイドルグループ欅坂46のハロウィンライブでの衣装がナチスドイツの軍服に酷似していると、米のユダヤ人人権団体が31日、秋元康とソニーに対して抗議文を送り、プロデューサーの秋元康はこれを受けて謝罪した。
炎上したハロウィン衣装
10月22日に横浜アリーナで行われたライブイベント『PERFECT HALLOWEEN 2016』で、欅坂46の来た衣装がナチス・ドイツに酷似していると、日本のネットユーザーの間で話題となったのは記憶に新しい。この騒動は日本だけでなく、海外にも広まり、英タブロイド紙『デイリー・メール』『デイリー・ミラー』に加え、スウェーデンのニュースサイト『Nyheter24』、更にはカナダのテレビ番組でも取り上げられてしまった。
海外、とりわけヨーロッパではナチスを尊敬したり肯定したりする服装や発言には厳しい目が向けられる。かつてのナチスによるユダヤ人大虐殺がその歴史的背景だ。ドイツが敗戦してから70年以上経っているが、いまだにユダヤ人を始めとした多くの人々に大きな爪痕を残している。
さらに英大衆紙「デイリー・メール」(電子版)や「デイリー・ミラー」(同)など海外メディアがこうした騒ぎを報じた。デイリー・ミラーは「第2次大戦時のナチスの兵士の制服に似た衣装がファンにショックを与えた」などとし、イベントの様子を報じたテレビ番組の動画付きの記事を掲載している。 pic.twitter.com/LpmQi93enW
— Yasu (@noosa_noosa) 2016年10月31日
英タブロイド紙『デイリー・メール』で使用された比較画像
黒いマントに翼を広げた鷲の紋章があしらわれた黒い帽子は確かにナチスの親衛隊(SS)と酷似している。ワンピースのボタンの位置もナチス将校の軍服を連想させる。おそらくデザイナーはナチスのものとわかっていて、デザインに取り入れたのだろうが、着ている彼女たちはまさかナチスとは思わなかっただろう。こんなに大事になってしまい、彼女たちが一番気の毒だ。
ついにユダヤ人人権団体SWCが動いた
10月31日、アメリカを拠点とするユダヤ系人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター(Simon Wiesenthal Center)」が公式に、所属レコード会社のソニーミュージックグループとプロデューサーの秋元康に対して謝罪を要求する内容の抗議文を送った。
同センターのエイブラハム・クーパー副所長( Associate Dean Rabbi Abraham Cooper)は、重大の少女がナチスを連想させる衣装を着てステージで踊ることはナチの大量虐殺の犠牲者に対して苦悩を与えるとし、ひどい不快感があると表明した。
アイドルグループがユダヤ人を傷つける意図がなかったにしても、ナチスの被害者の記憶を軽んじるパフォーマンスであり、ネオナチが勢いを増すドイツを初めとする世界各国の若者に間違ったメッセージを発するものです。私たちはソニーのような国際的なブランドが困惑をもたらしたことに対して、日本が改善することを期待します
エイブラハム・クーパー副所長の抗議文の和訳。第二次世界大戦中にナチスと同盟関係にあった日本だが、この衣装がユダヤ人を傷つけることに対してピンとこない日本人も多いと思う。海外でも活動を展開し、話題になりつつある日本の「アイドル文化」だからこそ、こういった騒動にはもっと敏感になるべきだろう。
秋元&ソニー謝罪
ユダヤ人人権団体の講義をうけて、秋元康とソニーミュージックグループが早速謝罪を表明した。
ニュースで知りました。ありえない衣装でした。事前報告がなかったので、チェックもできませんでした。スタッフもナチスを想起させるものを作った訳ではないと思いますが、プロデューサーとして、監督不行き届きだったと思っております
秋元康の謝罪コメントの一部。「ありえない衣装」と言いながらも、「ニュースで知った」「チェックもできませんでした」などどこか逃げ腰。そもそも「ナチスを想起させるものを作った訳ではない」は言い訳でしかなく、謝罪でもなんでもない。かつて乃木坂のスカートをたくし上げる振り付けが「下品だ」と批判が起こったときも責任をすべてスタッフに押し付けていた。海を超えた歴史的な問題なのだからもう少し真摯な態度で謝罪してほしかったところ。しかし責任転嫁が秋元の常套手段だ。ファンもいつものことと呆れている。
私どもの認識不足により、衣装の色やその他を含む全体のデザインが、そのようなイメージを想起させる部分があり、ご不快な思いをさせてしまったことに対し、心よりお詫び申し上げます。また、当該の衣装に関しては、今後一切着用いたしません
1日にソニーが公式に表明した謝罪コメントから。こうは言っているものの、5年前にも氣志團が衣装にナチスを想起させるハーケンクロイツと酷似した腕章をつけていたとして、ユダヤ人人権団体から抗議を受けて謝罪している。当時の謝罪文でも衣装は廃棄し二度としないなど同じようなことを言っている。仏の顔も三度まで。グローバルな企業なのだからこれで最後にしてほしい。 もとより、欅坂46の衣装のコンセプトは軍服だ。それはデビュー曲の「サイレントマジョリティー」や「世界には愛しかない」の衣装でも見て取れる。問題はこの衣装コンセプトのまま活動できるかどうかだ。さらに今の時期にこういった騒動がおこると、彼女たちの紅白出演にも悪い影響を及ぼしてしまう。そういった意味では、秋元康とソニーがすぐに謝罪を表明したのはすばらしい対応と言える。
この騒動で一番責任を問われる立場なのは欅坂46のメンバーではなく、秋元康をはじめとした大人たちなのは確かだ。しかも秋元は2020の東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の理事の一人だ。本来ならもっと配慮しなければならなかったところを、詰めが甘かったために海外メディアに日本の恥をさらすことになってしまった。
欅坂のメンバーには、この騒動を乗り越えてクール・ジャパンの担い手になってほしい。
『サイレントマジョリティー』
via www.youtube.com