ジブリ映画『レッドタートル』がアニー賞受賞!大コケだったのになぜ?

映画

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米ロサンゼルスにて行われた「第44回アニー賞」で最優秀編作品賞を受賞しました。赤字の興行収入、評価も中途半端だったにも関わらず、同じくノミネートされていた『君の名は。』を押さえての受賞でした。

プロからの評価は高い『レッドタートル』

 2016年のカンヌ映画祭で初公開され、日本では9月から公開されている日仏共同制作映画『レッドタートル ある島の物語』。興行収入は公開された9月17日から18日の週末興行収入ランキングでトップテンにも入らずそのままフェードアウトしていました。評価も平均並みとパッとしなかったにも関わらず、第69回カンヌ映画祭では「ある視点部門」で特別賞受賞。

 更に今回アメリで現地時間の4日に開催された第44回アニー賞でも「インデペンデント最優秀長編作品賞」受賞と、プロによる評価は高い模様です。しかし「ロサンゼルス映画批評家協会賞」は『レッドタートル』は欠品となり、受賞は『君の名は。』となっていました。ちなみにアニー賞最多受賞作品はディズニーの『ズートピア』です。ゴールデングローブ賞やエディ賞など海外の賞を総ナメ状態にあるズートピア。日本でもヒットしましたが、下半期は『君の名は。』の方が話題になりましたね。

ジブリの影が薄い?あらすじと見どころ

フランス語版『レッドタートル』予告

 とある無人島に1人の男が漂着するところから物語は始まります。最初は無人島から脱出しようとしますが、どんな方法を試しても失敗し、島に戻ってきてしまいます。次第に男は島にいる赤いウミガメや生き物たちとの交流を楽しむように。そんなある日、島に謎の女がやってきて男の日常が変わります。音声の演出が一切ないサイレント映画で、男と自然、女との交流を美しい映像とともにおってゆくストーリーです。

 監督はオランダ出身のマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィットさんと高畑勲さん。製作では鈴木敏夫さんが関わっています。via www.youtube.com この映画は構想に10年、制作に8年という長い時間をかけて製作されてきました。宮﨑駿さんがドゥ・ヴィットさんの作品『岸辺のふたり』に惚れ込み、鈴木敏夫さんが映画製作の正式なオファーを出したのが始まりです。絵コンテの段階では日本にやって来て高畑監督と会談もしています。

ジブリっぽくない絵柄

 このように構想やプロデュースの段階でジブリは関わっていますが、製作の殆どはフランスで、フランスのスタッフによって行われました。目立った日本人スタッフも鈴木敏夫さんしかおらず、ジブリはお金を出しただけと言っても過言ではありません。それはそれで、宮﨑駿さんの「本望」だったのでしょうが、ジブリの名前があれば、ある程度のジブリファンは「ジブリっぽさ」を期待してしまうでしょう。コケた理由の一つはここにあるかもしれません。『レッドタートル』のワンシーン

『レッドタートル』のワンシーン

 とてもキレイな映像ですが、明らかにジブリの絵柄ではないし、雰囲気もないです。人物の表現が特に顕著で、分かりやすい「外国のアニメ」な感じがします。ジブリと言われなければ誰も気付かないでしょう。via google imghp

見たひとの感想

 様々な映画講評サイトでは概ね「星3つ」といった中途時半端な評価。その内実は最高評価の人と最低評価の人が半々というかんじです。


「一緒にほのぼのとした小さな幸せに浸ったり、悲しくて涙したりしてしまった。」

「心を静かに満たしてくれる映画でした。」

「ただ、一瞬一瞬の描写の緻密さと繊細さ、それでいて大胆な挑戦の数々に魅了されるばかり。」

 高評価の人は主に映像の美しさを賞賛しているようです。セリフがないぶん映像の美しさを単純に楽しめるのでしょう。また、ゆったりとしたストーリー、あるいはあえてはっきりさせないストーリーが想像力を刺激して、見た人それぞれが思いを馳せることが出来たようです。その観点で言えば、無声映画の良い所を遺憾なく発揮させていたといえるのではないでしょうか。

「何を訴えたいのか良くわからない。」

「今回の作品は、色んな意味でもジブリっぽくないと感じた。」

「プロデューサーの鈴木さんが、100人が見たら100通りの見方ができる映画、といっていたが、それは逆に言えば監督の自己満足ダメ映画。」

 低評価の人は、逆に声がないことや、ふわっとしたストーリーが気に入らなかったようです。キレイな映像だけを見て眠ってしまった人もいるのではないでしょうか。名ばかりジブリだったために、映画にジブリっぽさを求めて行った人は裏切られたように感じたはずです。また中にはアンチ鈴木敏夫的な感想を持った人も一定数いました。『千と千尋の神隠し』や『ハウルの動く城』など、ジブリ黄金期の作風を期待した人にとってはがっかりの出来栄えだったようです。

まとめ

 結局「ジブリ」の名前の割には作品をとっても、興行収入をとってもパットしなかったのが『レッドタートル』なのでしょう。「多くの人にみて欲しい」というよりは、宮﨑さんがラブコールを送って、ドゥ・ヴィット監督がそれに応える形で作った「宮﨑さんのために」という作品だったと言えるでしょう。多くのタイトルで『君の名は。』と並んでノミネートされることが度々あるため、単純に比べられがちですが、映像美という観点で言えば両者は申し分ないくらい美しいです。あとは見る側のストーリーの好みで分かれるのではないでしょうか。『レッドタートル』のエミー賞はアニメ界のアカデミー賞、『君の名は。』のロサンゼルス映画批評家協会賞はアカデミー賞の前哨戦と言われています。どちらも今年度のアカデミー賞にノミネートされていますが、甲乙つけがたい出来です。しかし、アカデミー賞のアニメ部門における大本命は『ズートピア』なのではないでしょうか。昨年は特に秋以降のアニメ映画にいい作品が多かった日本の映画業界ですが、国際的にアピールするには時間が足りなかった側面もあります。アカデミー賞ノミネート作品は今回あげた3作品以外にも素敵な映画がたくさんあるので、今後にきたいしたいです。



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